1 Sな彼女とドSな彼

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人前に出るのが仕事の営業部と違って 裏方で黙々と仕事をこなすシステム部は "いかにも"な男ばっかり。 地味で大人しくて 年齢層が若い割に活気がない。 そんな空気の中で (よう喋るやっちゃなー……) 普通の神経なら私語はためらうやろ。 始業時間ギリギリに来て 隣の席に座ったサヤカは軽く挨拶して 嬉しそうにコンビニの袋を見せる。 「西川さん、新商品のチョコ買って来たんです。食べません?」 しかも食い物の話が多い。 「ええわ。俺あんまチョコ好きちゃうし」 痩せたいと言う割に食い過ぎやねん(笑)。 「ええ〜? いっつも引き出しにM×Mチョコ入ってますよね?!」 「あ、あー……」 M×Mのチョコレートは 実結がいつも食べていた。 俺はマーメルチョコ派やって言ったら キレられた。 『間宮実結のイニシャルはMMで西川紀樹のイニシャルはNNなんだから、M×Mを食べるべき』 無茶な実結論でM×M派にさせられた。 それ以来 糖分補給にM×Mを食べている。 「脳の活性化にチョコが必要やからな」 「脳の事を考えたらアーモンドチョコがいいって言いますよ」 「そうなん? アーモンドって何かあるん?」 「さあ?」 「知らんのかい! もうええわ。働け」 「怒らないで下さいよ〜」 サヤカは笑いながら バンバンと紀樹の背中を叩く。 「痛ったいわ、あほ!」 「そんな強く叩いてませんよ〜」 全くああ言えばこう言う……! 「あのなぁ……」 「あ! 山田くん、おはようございます。新商品のチョコ食べない?」 人の話を最後まで聞かない上に まるでシステム部のオカンのように すっかり皆に馴染んでる……。 驚いたのは馴染む早さだけじゃない。 「岸谷さん、来週好きな子の誕生日なんです。プレゼントは何がいいですかね?」 山田から恋愛相談を受けるくらいに 信頼を寄せられてる事に驚いた。 「ん〜、まだ付き合ってない相手ならお花とか喜ばれるかもね」 見かけによらず乙女な回答にも驚く。 「わかりました。頑張ります!」 山田の口から恋バナが出たことに 一番驚いたけど。 お花……なあ。 そろそろ実結姫様のご機嫌の悪さも どうにかせな、な。
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