4 潜入

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『猫夢殿』への道、それを見つけることは容易い。 日によって場所が変わることもあるが、『猫蟲』達が放つ、うっすらとした金色の光が漆黒の闇の中に光の道を為しているので、それを辿って行けば『猫夢殿』に難無く辿り着くことができる。この『猫蟲』達は、猫たちが昼間の間にため込んだ、人から受け取った幸せである、謂わば『年貢米』を、現世から『猫夢殿』へと運んでいるのだ。『猫蟲』の行列の中には、先程我が家の飼い猫である「ヒカリ」から抜け出たものも居るに違いあるまい。 小指の先っぽ程度の大きさの『猫蟲』達が仄かに照らし出す道、それを伝って私たち「猫泥棒」は『猫夢殿』へとひた走る。 程なくして『猫夢殿』に辿り着く。 『猫夢殿』の形、それは何とも形容しがたい。 キャットタワーのように見える箇所もあれば、ゴツゴツした岩壁に無数の小さな穴が空いているような箇所もある。細い壁が連なるような箇所があるかと思えば、ソファを大きくしたような、フワフワしたような箇所もある。恐らく、現世の猫が思い浮かべる居心地の良い場所のイメージを集め、それを無秩序に組み合わせたようなものなのだろう。 その形は常に一定という訳ではなく、次第次第に変化していく。訪れる度毎に少しずつその形は変わっているし、一年も経てば随分と変わってしまう。季節、あるいは現世の趨勢に合わせて猫が心地良いと思う場所も少しずつ変わっていくのだろうから、それを反映しているのだろう。
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