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それぞれの体へ十分に『年貢米』を吸い込ませたら、いよいよ撤退の時間だ。
勿論、吸い込んだのは棚一面に納められている『年貢米』の一部にしか過ぎない。
『年貢米』にも納められた時期があるのだ。
古い時期に納められたものは、新しいものと比較して発する光はやや弱々しい。
『猫蟲』がせっせと現世で集め、そして『猫夢殿』に納めたはいいけれども、結果として「集め過ぎ」であり、活用されていないものを拝借するのだ。本来、『年貢米』は猫たちが猫たちのために集めたもの。それを闇雲に奪っていく訳にはいかない。取られ過ぎた分だけ取り戻す、それが「猫泥棒」の掟なのだ。
『年貢米』が納められた場所を出ようとしたその時だった。
茶トラの猫が入口に姿を現わした。
金色の淡い光を放つ『年貢米』を咥えている。
どうやら、この『猫夢殿』の下働きの猫のようだ。
精製した『年貢米』をこの場所に納めにやって来たのだろう。
我々の姿を認めたその下働きの猫は酷く狼狽し、その毛を逆立てる。
やれやれ、少々面倒なことになってしまった。
下働きの茶トラ猫は、「猫泥棒が出たぞ!」と叫び声を上げる。
その叫び声を聞き付け、五匹ほどの他の下働きの猫たちが、つむじ風のように姿を現わす。
そして、我々『猫泥棒』の行く手を遮るかのように立ちはだかる。
この下働きの猫たちも私たちと同様、現世から来た者なのだ。
『猫夢殿』を管轄する『猫神仙』からこの夢の世界で動ける資質を見込まれ、彼らが眠りに就いている間、この『猫夢殿』へとお手伝いに来ているのだ。
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