6 疾走

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月が西へと傾くにつれ、 虹の橋は次第次第にその幅を狭めていく。 もう少し時が経てば、そしてもう少し駆ければ、 この虹の橋も途切れるだろう。 我々が駆けた後に残される金色(こんじき)の粒子も 途切れ気味になってきた。 虹の橋の端に辿り着き、 そこから夜空へと踏み出せば、 我々は現世(うつしよ)へと戻るのだ。 今宵の『猫泥棒』はそれで終わりとなる。 虹の橋の端が視野に入る。 今宵も無事に『猫泥棒』を成し遂げられたとの安堵感が心を満たし始める。 そして、仄かな寂しさもまた込み上げてくる。 虹の橋の端、そこに小さな影を認めた。 あれは・・・随分と懐かしい姿だ。 じんわりとした喜びが私の心に湧き上がってくる。 驚きと、そして深々とした悲しみと共に。 その小さな影へと駆け寄る。 その小さな影の主へと声を掛ける。 「ツヨシ君、久しぶり!」 そう、その小さな影の主は、 先代の柴犬の『猫泥棒』であるツヨシだった。 ツヨシは答える。 「こんばんは、あきのりさん」
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