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おや、昭典とツヨシの話は終わったようだ。
そうそう、早よせぬと、月は沈み、そして、虹の橋も消えてしまうぞ。
ツヨシが昭典に別れを告げている。
見送る昭典は涙しているようだ。
逢えるよ、いずれは。
必ず。
されど、それがなるべく遠き日となることを願うぞ。
しっかり生きてくれ、昭典。
『猫泥棒』としてのこれまでの務め、大儀であった。
ツヨシが駆けてくる。
虹の橋の上を。
夢の世界へ向かって。
鏡の如き月が放つ、銀の光を浴びながら。
その体から眩い光の粒を散らしながら。
現世にてその身に蓄えた「幸せ」を、
全て還して「夢の世界」に来る積もりなのだろう。
この夜の下で、寂しさに震える小さき者達のために。
最期の最期まで『猫泥棒』なのだな、お前は。
今までよく生きたぞ、ツヨシ。
おかえり。
【『猫泥棒』・完】
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