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「アレックスの独り言」
※注:
高校の時から付き合ってたマリア。彼女を一人残して、アレックスは中東へ取材に行き、その後、行方不明になります。
マリアは「取材から戻るまで待ってる」と言っていたんですが、安否不明のまま数年が過ぎ。
さすがに、信じて待ち続けることはできずに、彼のアパートを後にします。(後日談で別な男性と結婚して、子供をもうけて、さらに離婚して、シングルマザーになってから、アレックスと再会することになります)
アレックスは悪運だけはいいので、生きてNYに戻ってきますが、でも、部屋には、もうマリアはいなかった…。(何が彼女に起こったか察しはつきますが。分かっているけれど…って感じ)
気持ちの整理もつかず、アレックスの生活は荒んでいき、女性関係も結構結構になり。(でも、二股はかけませんから)
そんな状況=マリアがいなくなった直後のアレックスです。
薄暗い夕闇が東の空から進んでくる
薄紫の夕明かりが残る西の空に向かって
夜空に突き刺さる三日月
ちょうど南西の空に低い位置
澄んだ秋の空気が冷たい
吸い込んだ空気が冷たい
飲み干そうと口に含んだビールが体温を奪って冷たい
俺が吸うタバコの煙が頬をかすめ通り過ぎていく
遠くに街明かり
このあたりは一軒家が多い住宅地
その家々にポツポツとオレンジ色の明かりが灯る
俺はこの時間が好きだ
家々に命が灯るように明るくなる
誰かが誰かを待っていてくれる場所がある
時間を追うごとに確実に目に見えて増えていく時間が
帰る場所などない俺にとっては
明かりが灯るのを見ているだけで幸せな気分になる
そこにはきっと誰かの笑顔があるんだろう…
俺にとって
その誰かは…
なあ あんたも俺と同じ月を見ているか?
思わずアルミ缶を持つ手に力を入れた
紙のように柔らかい音を立てて原形を留めなかった
俺の手の中には小さく潰れ
ひしゃげた白銀の満月がある…だけだ
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