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衝撃の事実
翌日、英語部に顔を出さず、寮で勉強をしていると綾光さんからメッセージが届いた。
『昨日はありがとうね。今日、早速だけど夕飯食べ終わったら部屋に来ない? 英会話のレッスンしよう』
「あ……」
なんて返事しようか迷ってると、部活動を終えた田辺君が帰ってきた。
「あっちー! 腹減ったよー!」
「あ、おかえりっ」
「シャワーしてくるから待っててね」
「うんうん」
田辺君がお風呂に入るのを待って携帯を見る。
もちろん「行きます!」と返したい。でも……。
綾光さんが噂の東条院様だとわかって、緊張感がドドドドと攻め寄せ指が躊躇する。心臓が縮みあがって胸をごしごしと摩った。
大丈夫だよ。綾光さんはすごくカッコイイ人だけど、とても気さくだったし。優しい人だったし。怖いことなんてないんだから。
「お待たせ~。あー腹減ったぁ。食堂行こうよー」
田辺君が戻ってきて、向かいのベッドにドサッと倒れゴロゴロしながら言う。僕と似たような背丈のくせに田辺君が食いしん坊なのは、やはり運動系の部活だから。
「う、うん」
僕は意を決しエイ! と『はい、お願いします』と素早く打ち込んで携帯をポケットに入れた。
二階の部屋を出て階段を降りる。
寮の一階は食堂とカフェ、コンビニが占めている。
コンビニには生活用品や文房具、常備薬も置いてあり充実している。もちろんATMもある。不便は全く感じない。
「どうしようかなぁ。桜なににする?」
「うーん」
「俺はハンバーグ定食にするか……やっぱ、ラーメン炒飯セットにするかー」
「じゃぁ僕も……」
「桜もラーメン食べたかったの?」
「そういうわけでもないけど」
「なんだそれ。まぁ、いいけどさ。桜って結構そういうの多いよね。ベッドの場所決める時も僕はどっちでもいいからって、俺に選ばせてくれたし。でも、ご飯くらい自分の食べたいの選べばいいのに」
食べたいものが特になかっただけなんだけど。まぁ、でも確かに田辺君の言うことも一理あるかもしれない。
この学校に入学したのは家の決まりだったからだし、英語部に入ったのも勧誘されたからでそれ以上の理由なんてなかったし……。
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