衝撃の事実

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 田辺君が千円札を入れ、ラーメン炒飯セットとプラス唐揚げボタンを押した。僕はラーメンセットだけにしておいた。  ラーメンをズルズルすすりながら田辺君が小さな声でボヤく。 「あー俺も、東条院様とバッタリ出会って一緒に歩いて帰りたいわ」 「そうなの? 有名人だから?」 「それもあるけど、めちゃくちゃカッコイイじゃん? 至近距離で見たら気絶しちゃうかも?」  気絶しちゃうんだ……。 「あ、ほら、聞いたことあるじゃんね。赴任したばっかの新米教師がガチ恋しちゃってさー」  田辺君が卓球部の先輩から聞いた東条院様伝説を思い出す。あの時は、噂って尾ひれが付くものだし……なんて思ったけど。ご本人を知ってしまった今では信ぴょう性が増してしまった。 「うんうん。確かにすごくカッコいいもんね」  綾光さんが東条院様だって知らなかった僕だからか、気絶こそしなかったけど確かに時間は止まってた。 「東条院様になら抱かれてもいいわ。女やります!」 「田辺君、抱っこされたいの?」 「えー?」  田辺君が呆れ顔になった。 「大好きなんだねぇ」 「みんなの憧れの王子様でしょ。あんな完璧な人ほかにないっしょ」  田辺君がどこまで本気なのかはわからない。でも、僕らが全寮制の男子校だからか田辺君の話によると学園内でお付き合いしてる人たちも結構いるらしい。    相手の性別に関係なく、僕には恋というものがさっぱりわからない。  目をキラキラさせて話す田辺君に今から綾光さんと会うよとは、とても言えなくて黙ってチャーハンを食べた。  部屋に戻るとまたポケットの携帯が震えた。 『僕の部屋は五階の五二五号室だよ。入りにくいと思うから入口で待ってる。一年の寮を出たら教えてね』 『わかりました。お願いします』  返事をして、ノートと筆箱を鞄に入れ準備をした。 「田辺君、ちょっと出てくるね」 「へ? どこ行くの?」  田辺君が目を丸くする。 「うーん、勉強会?」 「ああ、一階? いってらー」  一階じゃなくて、三年の棟なんだけどと思いながら頷いた。  食堂の横にはカフェテリアスペースがあって、ひとりで集中したいとか、たまには違う場所で勉強したいという生徒に開放している。いくらカーテンで仕切ることができても、隣人の気配があると集中できないという声もあるらしい。カフェテリアは広くて開放感がある。テーブルとテーブルの間隔もあるし、ドリンクも飲み放題。自室より快適だと思ってる人もいるみたい。  カフェテリアは夜間十時まで使用OK。寮の玄関も十時で施錠されるルールになっている。だから十時までには戻ってこないと野宿になってしまう。
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