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Trouble……迷惑……。
迷惑なんて、そんなっ。
僕はフルフルと顔を横に振った。
英会話のレッスンなのに僕はさっきから一言も話せていない。綾光さんもとうとう黙ってしまった。小首を傾げ微笑んだ表情のまま僕を見てる。
微笑んでるのに、なぜかちょっと寂しそうにも見えて……。僕の方こそ綾光さんを困らせてる……。そう思ったらどんどん気持ちが焦りだす。
なにか、なにか言わなきゃ。せっかく僕のために個人レッスンを申し出てくれたのに。迷惑していないって伝えなきゃ! 言えっ!
「 I'm sorry. I love you」
勢いに任せ言った英文に綾光さんの目が丸くなった。そして、嬉しそうに微笑んだ。綾光さんの顔が近づいてきて、ほんの少しだけ唇に唇が触れる。
それはほんの一瞬だった。でも確かにくっついて、何が起こったのか理解できなくて僕は完全にフリーズしてしまっていた。
今の……スキンシップ? って、僕 I love you って言っちゃった。
直訳なら「あなたを愛しています」この英会話これで良かったの? あってたの? どこまでが英会話のレッスンなのかわからなくて、触れた唇に手を当て綾光さんを見た。
「I love you too」
続く英会話。綾光さんの発音はすごく綺麗ですんなり僕の頭に入って、ポーッとさせてしまう。ちゃんとソファに座ってるはずなのに、フワフワした浮遊感。
「逃げないと……食べちゃうよ?」
綾光さんがそっと囁く。その声は全然怖いものではないのに、体がすくんでしまう。
た、食べる?
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