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光輝さんの両手が僕の肩を掴む。小首を傾げるように顔を覗き込まれ、綾光さんと同じ顔にまた頬がカーッと熱くなる。
「ほんとに?」
でも、光輝さんの声はすごく不安そうで。綾光さんより前髪が長くて、表情はハッキリ見えなけど寂しそうな感じがした。キュウと胸の奥が痛くなる。ソックリだけど、やっぱり綾光さんとはタイプが違う。同じように悲しそうな感じでも、僕に変な焦りはなくて。なんて言ったらいいのか……悲しそうな光輝さんを見ていられなくなるような感覚。
だから、僕は頷いてまた嘘をついた。
光輝さんの表情がちょっとだけ和らぐ。
「あっと、ごめん。引き止めちゃって」
「いえ」
光輝さんはボソッと言った。
「ち、ひろ……?」
「へ?」
「智尋、って呼んでいい?」
「あ、はい。よろしくお願いします」
光輝さんは「うん」と頷いて、両手をポケットへ入れた。
「中、入れよ」
僕が寮に入るまで見てるから。というみたいに動かない。
「送ってくれて、ありがとうございました。では、おやすみなさい」
光輝さんへ頭を下げ、僕は寮へ入った。
エントランスでチラッと振り返ると光輝さんはまだ僕を見ていた。
荒々しい雰囲気にビックリしたけど、光輝さんも紳士的な人。やっぱり双子なんだなって思った。
「おかえりー。どしたぁ?」
ベッドで寝転がってた田辺君が、スマホから顔を上げ言った。
「……え、なにが?」
「なにがってぇ。黙って入ってきたと思ったら、ボーッと突ったったままやん」
いつの間にか部屋に戻っていたらしい。
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