衝撃の事実

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「あぁ、ただいま。あ、ねぇ、東条院様って兄弟いるの知ってた?」 「へ? 兄弟? 一年に?」  やっぱり情報に詳しい田辺君も知らないみたいだ。そうだよね。知ってたらご飯の時に話題に上がるはずだもの。 「ううん。それが双子」 「へぇ!? 知らない知らない! そうなん? どこの学校?」 「ここの学校。僕もビックリだよ。東条院様の名前は僕でも聞いたことがあるくらいなのに、でも双子の弟さんがいるのは田辺君も知らなかったんだよね。なんでかなぁって。双子だし、ただでさえ目立つよね?」  田辺君がベッドから完全に起き上がりあぐらをかいた。 「てか、桜、なんでそんなこと知ってるの? てか、その情報マジ?」  田辺君の追及にドキリとした。そうだ、僕は一階のカフェスペースで勉強してる設定だったんだっけ。 「えっ! あ……うん。さっき、外で見ちゃって」 「誰を?」 「その、東条院サマ……たち?」  ああ、僕ってどんどん嘘つきになってしまってる。 「ふたりいたの? ウソだぁ! そんなの見たことないよ! あれじゃない? 他人の空似」  田辺君は鼻で笑ってゴロンと横になり、スマホを触りだした。 「……嘘じゃないよ?」  うん。これは嘘じゃない。  田辺君はスマホから顔を上げて僕を見ると、また体を起こしあぐらをかいた。 「わかった。卓球部の先輩に聞いてみよ。二年ならなんか知ってるかも」 「うん」  すぐに先輩から返事があったらしい。田辺君がまた指を動かす。そして目を丸くした。 「げげ。マジで双子なんだ。しかも、すっげぇ評判悪いって」 「へぇ……そうなんだ」  評判が悪い。確かにちょっと怖い感じもあったけど、ハンカチをずっと持っていてくれたり、さっきだってわざわざ寮まで送ってくれたり、根は優しそうなんだけど。 「成績はいいみたいだけど、態度悪いし、ケンカとか? 飲酒とか? 退学にならないのは東条院の名前と財力のおかげだってー。こえ~。この学校にそんなやつがいるの?」  田辺君の様子を見ていると、あんまり有名じゃなくてよかったとさえ思った。 「だから、東条院様もその弟とつるまないんじゃね? 一緒にいるの見たことないもん。逆に一緒にしないでくれって思ってるかもしれないな」 「そんな感じでもなかったよ? 綾光さ……マの方は特に。仲良さそうな感じだったけど」 「ふーん? てか、桜、外でなにしてたの?」 「あ、えっと、さん……ぽ? ほら、気分転換に外の空気を」  田辺君はいつも鋭い。嘘なんてつきたくない。本当はすごく苦手なのにな……。 「あ、そう。まぁいいや。でも意外だったなぁ。双子ねぇ……俺も見てみたいな。どんな感じだったの? やっぱあの顔なの?」 「うん。ビックリするくらい顔のつくりは同じだったよ。でも雰囲気は全然違ったけど。タイプ的には真逆だった」 「やっぱ綾光様のほうがいいよね!?」  田辺君が目をキラキラさせる。田辺君は本当に綾光さんが好きみたいだ。なんとも言えない居心地の悪さを感じてしまう。 「田辺君は綾光様の方がスキ? かも」 「へ? 桜はその双子の弟のほうが好みだったんだ」 「好みとかわからないよ。田辺君が言ってたみたいに抱っこされたいとか」 「抱っこされたいとは思わなかった?」  田辺君がヒヒヒと妙な笑い方をする。  実際は抱っこよりもすごいことになっちゃったし。  自分でもよくわからない、落ち着かない感情がモワモワして「知らないよ!」と言って布団をかぶった。  後悔みたいなモヤモヤ。でも、嫌だったの? と聞かれるとそうじゃないような……ドキドキとかしっちゃってたし。……綾光さん、なんであんなことしたんだろう。英会話のレッスン。光輝さんも参加したいって言ってたけど、レッスン、次とか……あるのかな?
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