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◇ ◇ ◇
翌日、目が覚めると綾光さんから連絡が来ていた。
『今日の夜、英語のレッスンしようよ。光輝も呼んだから。三人で英語だけで会話するの。きっととても楽しいと思うよ? どうかな』
まだ目がしょぼしょぼとする中で、うん。楽しそう。そう思った。『はい』と送りそうになって、ハッとし瞬時に指を持ち上げた。
前回綾光さんが誘ってくれた時、光輝さんは知らなかった。あの時は電波の調子が悪かったのかな? と思ったけど、よくよく考えたら、そもそも綾光さんは初めて会ったあの日も、光輝さんになりすまして僕を騙していた。結局なんでそんなことをしたのか、謎のまま。
光輝さんを前にしても綾光さんは悪びれるところが一つもなかったし。あの時、僕にもキスしてきた。きっとあれは冗談だったんだと思うけど……。
綾光さんは冗談でキスしてしまえるんだ。
僕と光輝さんは、しないとお別れになってしまうかもしれないのに。
僕は綾光さんを素直に信用できなくなっていた。
今こそ、何かあったときなんだ。
僕は光輝さんにメッセージを送った。
『おはようございます。突然なんですけど、さっき綾光さんから三人で英会話のレッスンをしようってお誘いがあったんです。光輝さんにも来てますか?』
返事はすぐにきた。
『七時から部屋に来いってきてる。智尋が行くなら行くよ』
そっか、光輝さんところにもちゃんと連絡が届いていたんだ。
ホッと安堵した半面、ちょっと心苦しくなった。綾光さんを頭から疑ってしまったから。なんだか、自分がひどい人間になってしまってる気がした。それでも僕は言った。
『じゃあ、ご一緒しませんか? 待ち合わせして』
『そうしよう。七時五分前に外で待ってるよ』
『わざわざ出てきてくれるんですか? 僕がお部屋まで迎えに行きますよ』
『じゃあ待ってるよ。綾の隣の部屋だから』
『はい。では夜に』
なんとなく使ってしまった夜にって言葉にちょっとワクワクっていうか、ドキドキしてしまった。いつもの散歩だって夜なのになんでだろう。
そんなことを思いながら綾光さんにも『よろしくお願いします』とメッセージを送った。
はぁ~、七時か~……早く夜になっちゃえばいいのになぁ~。
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