助けてくれた人

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 鈴木さんの体をポカポカ叩いて合図をするけど、鈴木さんは完全に頭に血が昇ってるみたいで全然聞いてくれない。  めちゃくちゃに振り回した手がメガネに当たり、どこかに飛んだ。カシャッと音がする。僕の真上には血走った目。まるで怪物みたいに僕を睨みつけている。  こ……こわい……。 「や、やだ……た、たっ、たすけてっ!」 「騒がないで! 痛くしないから! ね? 智尋」  ハァハァと呼吸を荒げた鈴木さんが僕のネクタイを無理やり解き、ボタンを外しながらまた顔を近づけてくる。ひえええっ! と目を瞑り顔をそむけたその時、部室のドアがガラガラッ! と勢いよく開いた。  鈴木さんの呼吸と動きがビタッと止まる。  た、助かるっ! 「誰かいる? もう部活は終了の時間だけど!」  高圧的な声に鈴木さんがアタフタと立ち上がった。机の下に落ちていた眼鏡を拾い、パッと耳に掛け、眼鏡の中心に指を添えて顔に押し当てる。 「あ、すみません。もう帰ります。おい、一年、戸締り頼むぞ」  さっきまでとは全然ちがう。嘘のように冷たい声と態度に僕はそのままの体勢で呆然と見上げるばかりだった。 「あ……し、失礼します」  鈴木さんは部室の入口で立ったままの人影に一瞬立ち止まり、戸惑った声で挨拶すると部屋から出て行った。  ガラガラと扉が閉まる音のあと、人影が近寄ってくる。  今度は背の高い人が僕を見下ろした。 「君、大丈夫?」  影になって顔がはっきり見えない。
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