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ローテーブルの上にはセンスよくいろんなお菓子が盛りつけてあった。飲み物もお茶やコーラ、濃い色したぶどうジュースに氷まで。紙コップじゃなくて、グラスが三つ。
「わあ! すごいっ!」
「どうぞ。ソファに座って。智尋君はなにが好き?」
「じゃあ、ぶどうジュースいただきます。あ、でも。光輝さんを待ちましょう。乾杯しなきゃ」
「ふふ。智尋君は優しいね。そんな智尋君だから、光輝もベタ惚れなんだろうね」
少し距離を開け、僕の隣に綾光さんが座る。
「いや……そんな、……」
ベタ惚れだなんて、綾光さんなにか聞いてるのかな? あっ、でも光輝さんは僕と田辺君みたいにそんな話するタイプじゃないよね。たぶん、あれだよ。ハンカチのことを言ってるんだよ。うん。きっと。
頭の中でごちゃごちゃ考えながら首をすくめると、綾光さんがジーッと僕を見た。
「実際どう? 光輝といて楽しい? あいつ口下手でしょ?」
「楽しいです……優しいし……年下の僕が言うのも変ですけど、かわいいっていうか……あ! 光輝さんには内緒で」
お願いしますと手を合わせると、綾光さんの目が優しく細まった。
「うん。光輝はとても可愛い。顔は同じなんだけど、僕とはぜんぜん違う。僕は愛想笑いが得意なんだけど、あいつは苦手なんだ。だからそれで損もする。でも治らない。不器用なんだよね。でも素直でしょ? そんなところがすごく好きなんだ。守ってやりたくなる」
やっぱり、綾光さんも光輝さんが大好きなんだなぁ。
「いいですね、双子って。素敵です。僕は年の近い兄弟がいないから、羨ましいです」
微笑んでいた綾光さんが「ふぅ」とため息をついた。
「でも双子って厄介なんだよ?」
「あ、間違えられてしまうからですか?」
「同じ人を好きになってしまうから」
綾光さんが僕の手をそっと握った。
え!
「初めて見た時、僕は智尋君を好きになってしまった。だから、つい、ウソまでついた。運命的なものを感じたんだ」
「ほ、ん……とに?」
綾光さんが静かに頷く。透き通るようなきれいな瞳に捕らえられ動けなくなってしまう。
「智尋君が入学してすぐに出会ったのが光輝だなんて。初めて光輝に嫉妬したよ? どうして僕じゃなかったんだろう……って。僕だったら良かったのに。そうしたら、きっと、僕は君を離さなかった。光輝みたいにどこの誰かわからないなんて悩むこともなかった」
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