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「えっ! あの時の人、綾光さんだったんですか」
綾光さんに二回も会っていた事実にビックリして、思わず両手で口元を覆った。
あの時は前髪で顔は見えなかったし、仰向けの時は目を閉じてたし、ハンカチで顔も半分隠れてたし、そもそも入学してすぐの出来事だったからなんとなくしか覚えていない。もう二ヵ月も前の出来事だ。
綾光さんはにっこり微笑んだ。
「そう、俺だったの。あの時は本当にありがとう」
「いえ、名前覚えていて下さったんですね」
「うん。ハンカチ返すのにずいぶん時間かかっちゃってごめんね?」
「ハンカチなんていいんです、気にしないでください」
「うん。じゃ、これからよろしくね?」
差し出された手に手を添えると、また大きな手が僕を包み込んだ。
なんて、偶然なんだろう。こんなに何度も巡り合っていただなんて……。
度重なる偶然の出会いに運命的なものを感じてしまう。
綾光さんとのアドレス交換は、妙に僕の気持ちを弾ませた。綾光さんに再度お礼とお辞儀して、寮へと入る。
寮は四階建ての建物で学年ごとに棟が分かれてる。一番手前が一年生の棟で、真ん中が二年。一番奥が三年生用だ。
部屋は相部屋だけど、広々としている。ドアを開けて右手にトイレ、洗面台。左手に風呂場。奥の引き戸を開けると部屋の真ん中に大きなテーブルがあって、両側の壁にシングルベッド。奥には勉強机と本棚。真ん中にはテレビが置いてある。一応プライバシー確保のため、天井にカーテンレールがふたつ走ってて、眠る時や着替える時にそれぞれがカーテンで仕切れるようになっている。
「ただいまー」
「うおおおおいっ!」
同室の田辺君が大きな声を上げながらバタバタ近づいてきた。ガシッと肩を掴まれた反動で頭がグランと振れる。
「ちょーー! なんで!? 知り合いなん? 知り合いだなんて聞いてねーぞ!」
「な、なんのこと」
「さっき、一緒に! ある、歩いてただろ? 三年の! 東条院様!」
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