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「涼香。今の曲は、松葉くんが涼香のために作った曲なんだよ」
「え? そ、そうなの? え、でも、だって、そんなわけ……」
「松葉くん、ごめんね。私にできるのはここまでかな。男の子には、何度でも言わせてもいいと思うんだ」
後ろでは昌人がうんうんとうなずいている。
藤牧さんは顔を赤くしてうつむいている。
三者三様で、見てて笑えてくる。
僕もそっちに逃げたかった。
「律生、くん。わ、私は……」
「涼香さん。少しだけ、僕の話を聞いてもらえますか」
とっくの昔に腹は決まっていたんだ。
今更ためらってどうする。
僕はもう、ありったけの言葉で、涼香さんに想いを伝えることにした。
「涼香さん、前に言ってましたよね。古賀さんがいなかったら、自分はなにもできないって」
涼香さんは、黙ったまま僕を見ている。
当然だ。いきなり何の話が始まるんだと思ったことだろう。
「ある本にあったんです。 これがなきゃ生きていけないとか、これこそが自分が生きる理由の全部だとか、そういったものは、この世界には存在しないって」
藤牧さんだけが違った反応を見せた。
これは、図書館で借りた本の話だ。
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