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「そんなでもこんなでもないんですよ。これ以上そういうこと言うと、怒りますよ」 「えっ、あ、えっと、ごめん、なさい」  今度は困った顔でまた泣きそうになっている。  こんなに表情豊かな人が、どうして今まで顔を隠していたのだろう。 「少しずつ、変えていきましょう。僕も、ついてますから」 「……うん」 「涼香っ」「律っ」 「あ、麻ちゃん?」「ちょ、マサ、なにすんだ」  僕と涼香さんに飛びついてきたそれぞれの親友が、口をそろえて僕たちを祝福してくれる。  これまでのやり取りをこの二人に見られていたと思うと、どうしたって照れが生じてしまい、なかなか上手に反応できない。  昌人が僕から離れ、涼香さんと古賀さんに寄っていった。  遠慮気味に後ろに立っていた藤牧さんが目に入ったので、僕はゆっくりと近づいて、小さく頭を下げた。 「松葉くん。よかったね。おめでとう」 「ありがとうございます。藤牧さんがいてくれたから、僕はここまでたどり着けました」 「松葉くんががんばったからだよ。私も、松葉くんの物語の登場人物になれて、嬉しいよ」 「この物語も、無事に完結を見ることができました」 「いやいや、人生が変わったというだけで、まだまだ終わりじゃないでしょ。むしろ、これからが大事なんじゃない」  藤牧さんは、少し遠い目をしながら、涼香さんを中心とする三人のほうを見て言った。 「そう、ですね。次巻に続く、と言ったところでしょうか」  次巻にも出演してくれますか。そう聞きたかったけど、やめておいた。  今の藤牧さんの笑顔を見ていれば、その要請は今さら不要だと思った。
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