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 僕の物語はこれからも続いていく。  この先も、たくさんの人や物と出会い、いくつもの分岐点を迎えることだろう。  楽しいことや嬉しいことばかりではなく、辛いことや悲しいことも、きっとある。  今回のように、ハッピーエンドばかりではないのだろう。   それでも、振り返れば必ずこの思い出があって、そこで出会った大切な人たちのおかげで今の僕がある。  それは絶対に変わることはないのだ。  だからこそ、僕は今、この瞬間の幸せを噛みしめていたいと思う。  同時に、今回の出来事をできるだけ覚えていたいとも。  心に響いた音楽やおもしろい小説も、それと初めて出会ったときに得た感動は、時間とともに薄れていく。  あとで振り返って、大筋の部分しか思い出せない。  それはあくまでも誰かが作った物語だからであって、僕はその世界を外から楽しませてもらっただけなのだ。  ならば、僕の物語を誰よりも鮮明に覚えることができて、誰よりも再現度高く語れるのは、当然僕なのだ。  僕が僕の物語を忘れるなんて、そんなバカなことがあってはならない。
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