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 街を歩いていて偶然耳にした路上ライブ。  その歌い手さんの美しい歌声に魅了され、紆余曲折あったのち、その人と恋人同士になることができた。  ものすごく端的にまとめれば、今回の物語はこんなところだろう。  だけど、こんな薄っぺらな要約で片づけられるのはごめんだ。  どちらかと言うと辛いことのほうが多かっただろう、紆余曲折の部分こそ、物語には必要なのだ。  そうじゃなきゃ、今の僕が味わっている幸福感や達成感にはつながらない。  だからと言って僕は、今のこんな時間が永遠に続けばいいと、そう願うわけでもないのだ。  今よりももっと素晴らしくて輝かしい未来があると信じているから。  僕の物語は今、新章が始まったばかりなのだ。  ただ、僕の物語は僕だけで成立するわけはなく、むしろ僕以外の登場人物のみなさんのおかげで色鮮やかになる。  これが、今回の物語で僕が学んだ一番のことじゃないだろうか。  人は一人では何もできない。いや、何かはできても、物語にはならない。  少なくとも、誰かの人生を変えることはない。
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