第1章 憧れの地

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「予算はどれくらいの物を考えてるんですか?」 「そうですねぇ……ちょっと奮発して、長期的に使えるものをと考えていますから、八万円以内くらいかと」 「本当に奮発しますね――と言っておきながら、ギリギリにはなるという前提でおすすめならありますよ」 「むむ、それは本当ですか?」  美味しい話に、やや興奮気味の桐島さんの顔は気が付けば至近距離に。  ふわりと良い香りがして、僕は咄嗟に目を逸らした。 「しかしですよ神前さん。貴方、ご自分で機械が苦手だと話しておられませんでしたか?」 「まぁ、そうなんですけどね。趣味と言いますか、カメラだけは多少造詣があるんですよ」 「それは頼もしい限りです。私、管轄外のものに関しては、そはもうからっきしで。すぐに出られますか?」 「え? ええ。葵はどうする?」  文句を言いながらも、手に持った本を既に開いて眺めている葵に語り掛ける。  返事は半分程度の意識によるものらしかったが、はっきりと「いく」と言った。 「決まりです。他にも少し買い足したい物があるので、大きいお店に行きましょう」  そう言うと、入り口の方を振り返って歩いていく桐島さん。  行先は、電車で二駅ほど走ったところにあるモール。件の物が一式揃っている電気屋、化粧品に女の子の道具と、スマホにメモをしながら進んでいく。  ただ必要な物を買いに行くだけの外出に、そこはかとなくワクワクしているように見えたのは気のせいだろうか。
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