第1章 憧れの地

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 電気屋に着くや、店員さんより僕の袖を引いてカメラコーナーへ一直線。  一応知識はあるつもりだけれど、過剰な期待に目を輝かせるのはやめていただきたい。  棚二つ程の狭い空間であっても、品数は存外に多く。  目的の品へと辿り着く前に、あれやこれやと目移りしてしまう。 「神前さん?」 「すいません、今」  呼びかけられて我に返って、中ほどにいる桐島さんに並ぶ。 「さてと、ですよ。神前さんのおすすめというものは?」 「ええ、丁度見つけたところです。が、その前に確認なのですけれど。予算は八万程度と仰いましたが、僕が提示するそれは七万と二千円弱です。大丈夫ですか?」 「ええ、問題ありません」 「了解です。ではこちらへ」  応じると、隅っこ上段に置いてある一つのデジカメを手に取った。  某大手メーカーのEZレンズキット、ミラーレス一眼レフ。カラーはホワイトしか在庫がないようだ。  全体的にバランスの良いタイプのモデルだが、これを勧める理由はいくつかある。
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