第1章 憧れの地

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 第一の理由。それは、その圧倒的な軽さとサイズ感。本体、バッテリー、レンズと合わせても四百グラムとちょっと。女性が長時間持っていてもそうそう疲れない。大きさも、縦横それぞれ六センチに十一センチと手の平サイズであり、万一邪魔になってバッグに仕舞おうとも、場所を取らない。  第二の理由としては、モニターがタッチパネルであるということ。  少し良い物を買おうと思うのであれば、自然一般的な一眼レフを手に取りがちだ。が、ただのレフともなれば、ピント合わせに手間がかかってしまう。それを含めカメラの魅力だと言われてしまえばそれまでだが、生業としていないような一般人には過ぎたる物。これはそれをタッチだけで合わせられ、かつレフとしての”ピントを合わせていない背景部分をぼかす”という機能を損なわない性能。  加えてそれはバリアングル液晶となっているので、必ず覗き込んで撮る必要はない。少しの移動くらいなら腕だけ動かして、液晶を自分の方に向けてしまえば直感的な写真が撮れるということだ。  といった理由からおすすめをするのだけれど――一気にしゃべって、少し引かせてしまっただろうか。  先ほどからずっと、黙ったままだ。  ちらと隣の桐島さんを見やる。  その目は先より一層輝き、飛びつくようにカメラを持っていない方の僕の手を取った。
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