第1章 憧れの地

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「カメラが欲しいと話しただけで、そこまで色々と考えてくれているとは思いませんでした! ありがとうございますね!」 「い、いや、言った通り趣味と言うか……思い出を形に残せるのが好きで、昔からよく祖母のカメラや雑誌で研究をと言いますか」 「なるほどです。一つ、神前さんのことを知れた気がして嬉しいです」 「それは良かっ――良かったのかな。まぁともあれ、おすすめするのはあくまで僕個人の意見ですけれど」 「いいえ、これにします。同じくらいの値段でも、一つ一つ違いがあるのは面白いところですね。そこまで熱弁されてしまっては、試してみないことには気分もおさまりません!」  何が。  興奮が?  僕が「はぁ」と反応すると、それをノーとは受け取らなかったようで、さっさとそれと同じ商品の入った箱を持って、レジの方へと走り去ってしまった。  そう言えば葵は、と見渡した先にいたのは、イヤホン・ヘッドホンコーナーにいる姿。  小走りで近寄って話を聞くことには、別に買うつもりはないけれど格好いいなと見ていただけらしい。 「音楽、聴くの?」 「たまにね。外では危ないから、イヤホンは必要ないの」 「なるほどね」 「うん。まことは?」 「んー、僕も最近は頻繁ではないかな。気になった曲があれば聴くって程度だと思う。ほら、某映像サイトとかでね」 「ふーん」  素っ気なく言って、葵はまたイヤホンの数々に目を落とした。  会話が途切れた辺りで、早くも会計を終えた桐島さんが帰還。  助け舟だと言わんばかりの圧で、袋に入ったそれを見せびらかしてくる幼さ。  歳上だけれど、何だか憎めない可愛らしさだ。
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