2 Sな彼女とドSな彼

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帰りの電車は死ねるほど混雑していた。 サヤカが奥の扉に背を向けて立つから 窓に片手をつくと向き合う形になった。 「だだ込みやな……」 ぎゅうぎゅうの車内に さらに人が乗り込んでくる。 体が密着する。 向かい合わせは……やばい。 身長差がそんなにないせいで 顔の真横にサヤカの顔がある。 サヤカの心臓がバクバクしているのが 伝わってくるくらいに ピッタリくっつき合う。 そんなに緊張されると 俺までめっちゃ恥ずかしい。 顔が見えなくて良かった。 車内は花火の高揚感からか お喋りしている人が多かった。 「俺な、基本的に車しか乗らんやん?」 耳元で小声で話す。 「はあ」 サヤカが間抜けな返事をする。 「通勤ラッシュとか経験ないねん」 「私もないです」 「これはヤバイな……」 「ねえ。かばん持たなくても落ちない感じですね……」 「せやなくて」 反対の手でサヤカの腰に手を回した。 「や、ちょ、ちょっと……」 「この状況で理性を保てって言われたら自信ないわ。痴漢のオッサンの気持ちの方がめっちゃ理解できるんやけど」 どうにかしてしまいたいと ちょっとだけ本気で思った。 ちょっとだけやで?(笑)
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