1 Sな彼女とNな彼

10/79
前へ
/81ページ
次へ
コンビニでミルクティーと サンドイッチとM×Mチョコを 買った。 空腹と疲労に耐えかねて チョコをすぐに開封。 一粒を口に入れて 元来た道を戻る。 駐車場の通用口まで来て ドアノブを回した。 上手く回らずに カチャッと音がするだけ。 力を入れて 何度も回すが、回らない。 開かない~! どうしよう! どうしよう! 必死でカチャカチャしていると 急にドアノブが回って 中からゆっくりとドアが開いた。 「この扉、オートロックやから(笑)」 外からは鍵がないと開かない、と 彼が笑いながら 私を招き入れた。 「そうなんですか。ありがとうございましたっ」 恥ずかしいやら何やらで 早足で建物の通用口へと歩いた。 「あっ!」と彼が言う。 無視してドアを開ける。 ところが、開かない。 カチャカチャカチャ……。 デジャヴ……! 「まさか……」 「うん。そこもオートロック(笑)。今助けを呼んでるから、ちょっと待ってな」 コンビニに行く時に 北山さんはそんな事は 教えてくれなかったよ~。 「もしかして西川さんも戻れなくなったんですか?」 「うん(笑)。さすが新しいビルはセキュリティがしっかりしてるよな(笑)」 沈黙が流れる。 穏やかな風の音がする。 彼との間にある沈黙は 嫌じゃなかった。 「そうだ。チョコ食べますか?」 コンビニの袋から 開封済みのM×Mチョコを出して 軽く振った。 「貰おうかな」と彼が左手を広げた。 その手に丸い小さなチョコを 何粒か乗せようとして バラバラと大量に中身が出た。 「あぁっ」 彼が慌てて両手で受け止める。 セ、セーフ……! 「こんないらんわ(笑)」 「ですよね(笑)。じっとしてて下さいね」 余分なチョコを箱に戻す。 手が触れると ドキドキしてしまう。 チョコのザラザラという音が 小さく響いていた。 「なあ、マミヤちゃん……」 「はい?」 彼が手のひらの数粒を握りしめた。 「一目惚れって信じる?」
/81ページ

最初のコメントを投稿しよう!

40人が本棚に入れています
本棚に追加