1 Sな彼女とNな彼

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「気安く呼ばないで下さい」 胸元の『MAMIYA』と書かれた 社員証を手で隠した。 「マミヤちゃんは新入社員ちゃうよなあ?」 人の話を聞きなさいよ! 「違います。新人研修の司会を新入社員がするわけないでしょ」 せっかく先輩社員っぽく見えるように 白いスーツをわざわざ買ったのに。 「それもそうやな(笑)。それよりプロジェクターの設定を課長に頼まれてるんやけど、どこにあるん?」 キョロキョロしながら 最前列の机や演台の中を探る。 「えっ? 私はプロジェクターに関しては何も……」 何でこの人が課長にそんな事を 頼まれてるの?! ガチャッと無遠慮にドアが開いて 私と同期の嶋村さんが プロジェクターを持って入ってきた。 「西川さん、プロジェクター持ってきましたよ~」 「舞ちゃん、ありがとう。この壁がスクリーンになるんやんな?」 前方左手の白い壁を撫でた。 「そうなんですよ~。新しい社屋はハイテクでしょー?」 「建物の場所は分かりづらかったけどな(笑)」 んん? 「嶋村さん、この講師の方と知り合いなの?」 「知り合いっていうか、うちの会社のシステムとかコンピューターの担当さんだよ」 「講師じゃないの?」 聞いた私にコンセントが渡された。 「講師はオマケみたいなもんやから。ほら、マミヤちゃんも配線手伝って」 講師……西川さんは手慣れた様子で 嶋村さんが取りに行ったノートパソコンと プロジェクターを繋いで起動させる。 真っ白い壁に青白い光が写し出された。 西川さんはパソコンの画面が スクリーンに映るのを確認すると 「また後で」と部屋を出て行った。 嶋村さんは目をハートの形にして 後ろ姿に手を振っている。 彼は一体何者なの?!
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