1 Sな彼女とNな彼

7/79
前へ
/81ページ
次へ
司会やプレゼンは慣れているけど 毎度とても緊張する。 女子アナをお手本にして 作成した原稿を読む。 この会議室は司会の演台の所に スポットライトが当たるように 照明の調整ができる。 薄暗い部屋でスポットライトを当てられ 新人研修というよりは 結婚式の司会者みたいで恥ずかしい。 そんなこと 誰も気にしてないんだろうけど。 プログラムは進む。 彼の番。 「続きまして、情報リテラシーに関するお話を西川先生お願いします」 私の横を通り過ぎる時 「俺は別に先生ちゃうけどな(笑)」 と笑って呟く。 「西川です。もう皆さんの集中力も切れてるやろうから、手短にしよっか。ほな、資料の一ページ目は飛ばして二ページ目を見て……」 彼の話は人を惹き付け 所々で笑いが起こる。 立ち姿は背筋がしゃんとしていて 真剣に話す横顔はかっこ良かった。 ライトのせいか 茶色い髪は透き通り 全身にラメが掛かってるみたいに キラキラして見える。 王子って呼ばれるわけね。 私には関係ないけど。 関係ないのに。 目が離せない。 不思議と胸が熱くなって 涙が込み上げてくる。 何だろう、この感覚……。 心が波立つ。 頭の中で声がする。 何……? 目を閉じても 何を言ってるかわからない。 「……以上。質問は~??」 やや大きめの彼の声に ハッとした。 視線が結ばれる。 外せなくなる。 彼が向き直って 部屋全体を見渡す。 終了の挨拶をして 捌けるまで 時が止まってるようだった。
/81ページ

最初のコメントを投稿しよう!

40人が本棚に入れています
本棚に追加