君の温度 *

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彼の指が先端を撫でる。漏れそうになる声を天明の肩口に額を押し当てて噛み殺す。目を開けていられなくて血の色が透ける瞼の裏で、与えて与えられることだけに溺れた。 最後は、自分の指先に反応する上擦った彼の喉声がトリガーになって熱を吐き出した。追いかけるように手のひらの中が濡れる。 昂りのままに抑え込んだ体を暴いてしまいたくなる。けれど汗で濡れた額に前髪を貼りつかせて眉を寄せる恋人を見ていると次第に冷静になっていった。 荒ぶっていた呼吸が緩やかに落ち着いて、エアコンの風を吐き出す音や窓の外を走る車のエンジン音が返ってくる。ゆっくりと体を起こすと汗と生臭い体液の臭いが鼻をついた。 ベッドに横たわったまま天明がティッシュの箱を取り寄せる。二、三枚引き抜いて手のひらを拭うと箱ごと馨に投げてよこした。同じく名残を始末してから床に落ちたシャツを拾う。 恐らく時間にすれば短い。それでも強い興奮を示した後の体は気怠くてボタンを留める気にはならなかった。羽織るだけにして項垂れる。 「どういう感情?」 「疲れた」 「あー、確かに」 屈託なく笑った天明が転がってきて馨の太ももに頭を乗せる。甘える猫みたいに目を細めるとこちらを見上げた。それからふと思い立ったように馨のシャツの襟に触れて、軽く()ぐる。 「ごめん。ちょっとだけ痕ついてるわ」 「見える?」 「一番上のボタン外してたら、もしかしたら」 「ふうん。いいよ、別に」 気のない返事をすると天明は驚いたようだった。瞬きをする彼の湿った髪を手櫛で梳かす。 「彼氏のマーキングだな」 屈んで額に唇を落としながら告げると普段自分を揶揄う恋人の耳がうっすらと赤くなった。らしくない甘やかな馨の言動に照れている。その唇を噛んで悔しがる様子を見ていると何故彼がいつも自分を困らせて楽しむのかわかるようだった。 「薫はかわいいね」 「覚えてろ。年上の彼女に調教されてるって噂流してやる」 「マーキング癖のある美人って言っておいて」 「日焼けの跡がセクシーな?」 「噛み癖もある」 「それはお前だよ」 冗談めかしながら天明が汗の引いた手を馨の手に滑り込ませてきた。骨張った指が力を込めるので同じ力で握り返す。 離したくない、離されたくないと願いながら手を繋ぐ。少なくとも二人の熱が冷めるまではこのままでいたい。 そう彼も思ってくれていたら嬉しい。
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