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残りの時間は、さっきのことを忘れるかのように、3人とも明るい曲を休みなく歌って、あっという間に2時間過ぎた。
カラオケ店を出た後は、そこで3人と別れる。
3人とも笑顔で、「楽しかったね!また4人で遊ぼうよ」「学校でも話そうね〜」「明日は一緒にお昼食べようね」と言ってくれた。嬉しかった。
歩いて家に帰る途中、私はリーダーの家に寄り道をすることにした。日曜日のこの時間は、リーダーは寺の方にいる。
寺の広い境内を見渡すと、本堂の前を、紺色の作務衣を着たリーダーが掃き掃除していた。
私は小走りで、リーダーの方へ近づく。
「リーダー」
声をかけた。リーダーが手を止めて顔を上げる。
「よお、篠岡」
「お疲れ様…」
「ああ」
リーダーは軽く笑う。
「買い物して来たのか」
私の手元の、ちょっと洒落た紙袋を見て、リーダーは珍しそうに言った。
「うん…ショッピングセンターに、行ってたの」
「ふうん」
「…買い物済ませた後、クラスの子たちに会ってね、カラオケに誘われたから、行ってきたの」
「へえ、そっか。楽しかったか?」
「うん…楽しかった」
私は頷いて、自然に微笑む。
リーダーも微笑んで、「よかったな」と優しい声で言った。
「リーダー…夜ご飯は、お寺で食べるの?」
「ああ、今日は兄貴が担当だ。弟も来てる。せっかくだし、篠岡も食ってくか?」
「…うん、食べたい」
「じゃ、先に中行ってろよ。俺はさっさと掃除済ませるからよ」
うん、と頷いて、その場を離れる。
打ち解けた人たちとの賑やかな夕食の時間が、凄く楽しみだった。
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