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…ポタッ…
頬に落ちた、生温い、もの、これは水?
体が動かせない。
金縛り?
まぶたを動かす。
そっと、目を開けるーーー
「……!」
すぐ目の前に、おぞましい女性の顔があった。
戦慄が走る。
悲鳴は声にならない。
指一本動かせない。
私の顔を覗き込む女性の、その恐ろしい顔と、こぼれ落ちそうなほど見開いた両目を凝視する。
女性が、口を、かぱっと開けた。
ポタッ、ポタッ
口の中は真っ赤な血で染まっていて、ポタポタと、止まることなく私の顔に落ちてくる。
むっとする、血の匂い。
真っ赤な口の中を見る。
あるはずの舌が、無い。
「……‼︎」
この女性は…『歌死魔さん』だ…
血を垂れ流す真っ赤な口が、動いた。
何か、言ってる。
けど、声になっていない。
あー、ぁあ、あー、ああ、…と、まだ喋れない赤ん坊のように、女性の必死なメッセージは、何も伝わらない。
不意に、女性が片手を上げた。
指先を、ゆっくりと折る。
3
指先を3本立てて、私に見せてきた。
その数字を確認した直後に、目の前が真っ暗になってーーーー
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