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写真部の普段は、部活動らしいことは特に何もしていない。
私は毎日部室に足を運ぶけど、1人文庫本を読んだり、テスト勉強をしたりして過ごす。部員全員が部室に集まる日は少ない。
でも、文化祭が間近に迫っている今は、ほぼ毎日部員全員が集まって作業をしている。
美術部と共に作品展示をすることが決まっていて、その準備が着々と進んでいた。
「–––おか…、篠岡!」
リーダーの声に、ハッとする。
顔を上げると、長机を挟んで真正面に座っているリーダーが、眉を寄せて私を見ていた。
長机の上には、バラバラに散らばった写真がたくさんある。
展示する写真選びの最中だったのに、私はぼんやりしていて手も止まっていた。リーダーの声も聞こえていなかった。
「…ごめんなさい、リーダー」
「どうした?体調が悪いならちゃんと言えよ」
「大丈夫…ちょっと、考えごとしてただけ」
「悩み事か?」
「ううん…どうでもいいこと」
って言ったけど、リーダーの眉は柔らかくならない。
「篠岡さん、もしかして…」
リーダーの隣に座っている正人君が、両手で頬杖をついたまま、珍しく真剣な顔をして私を見る。
「恋の悩みっスか!?」
ズバッと言われた。
私は無言で首を振る。
「ありゃ違った。ついに篠岡さんにも春が来たと思ったんスけど」
「正人、テメーは両手を動かせ」
「俺はちゃんと目を動かしてるっスよリーダー。先日撮ってきた廃墟の写真に幽霊が写っていないかチェックしてます!」
「誰が心霊写真を展示するっつった、え?」
「絶対に心霊写真の方がウケがいいっスよ〜」
「却下しただろーが。諦めろ」
リーダーと正人君が言い合いするのを黙って見ていた私は、ふと真横の方に視線を向けた。
窓際の方では、私たちから少し距離を空けて座っている2年の部員、潤君と神楽君が写真選びをしている。
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