上『歌死魔さんの呪い』

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* * * 私の目の前には、カラオケ店がある。 結局…断りきれなかった…。 自動ドアが開いて、私たち4人は店内に入る。ちょっとチャラい男性店員のやる気のない「いらっしゃいませー」と、ロック歌手の激しい曲が流れるフロント内。 落ち着かないな…。 「4人で。2時間でお願いしまーす」 慣れた様子で鈴村さんが受付をする。 店員さんから聞かれた会員カードと機種にも淡々と答えた鈴村さんが、 「あ、601号室って空いてますか?」 と言った瞬間、店員さんが分かりやすく眉を寄せた。どうしたのかな。 「…空いてますよ」 「じゃあ、その部屋でお願いしまーす」 店員さんは早々に手続きを済ませると、「ごゆっくり」と素っ気ない声でマイクの入ったカゴを鈴村さんに差し出した。 「さ、行こっか」 鈴村さんがエレベーターのボタンを押す。 その後ろに並ぶ私たち。 「いっぱい歌うぞ〜」 と明るい声で言う佐々木さんと、 「篠岡さんって、どんな曲歌うの?」 と聞いてくる川村さん。 「私、歌は得意じゃないから、あまり歌わなくて…」 と、私は言葉を濁した。 でも、カラオケに来てるのに、一曲も歌わないのは流石にできないな…。 一曲、何歌おうかな…。
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