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カラオケ店を出た私たちは、そのまま駅へ移動した。
改札口のそばに並んだコインロッカーの前で、神楽君が彼女から聞いた番号のロッカーを探し、そこに鍵がささっているのを確認する。
「中身はとっくに回収されちまってるな。管理会社に連絡して、荷物はまだ保管してるか聞いてみるか」
リーダーが壁に貼ってあった管理会社の連絡先を確認する中、潤君は隣に立つ神楽君に尋ねる。
「神楽、彼女がロッカーに入れていたモノは何なんだ?」
「スマホだよ」
「スマホ?」
「ああ。すでに解約されているスマホを、自身の歌を録音したり、歌詞をメモしたりする為に使用していたそうだ。けれどある時紛失してしまった。彼女は、一度だけ荷物を預ける為に利用したコインロッカーに、荷物を取り出した際にスマホを中に落としてしまったかもしれないと言っていたよ」
彼女から聞いたメッセージを話した神楽君は小さくあくびをする。なんだか眠そうな表情だ。
リーダーが管理会社への電話を終えて、私たちの方を振り向く。
「その番号のロッカーにあったスマホは、まだ保管してあるってよ」
「彼女はスマホが見つかったら、母方の祖母に連絡をとって、スマホを引き取りに来て欲しいと言っていました」
「祖母か…。電話番号はわかるのか?」
「はい」
神楽君が電話番号を言い、リーダーは打ち込んでいく。
潤君は不安な表情でリーダーに言った。
「知らない人から急に、亡くなった孫のことを話されたら、イタズラとか思われたりしないでしょうか…」
「まー可能性はあるだろうな。けど、なんとかするしかねぇだろ」
リーダーはスマホを耳にあてる。
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