下『死者のメッセージ』

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* * * コインロッカーの前に戻ると、スーツを着た若い男性が待っていた。 私たちに気づいて微笑む。物腰が柔らかそうな雰囲気の人だ。 「君たちだね、優子のことで電話してきた高校生は。俺は優子の幼なじみの、藤沢良(ふじさわりょう)だ」 藤沢さんと短い挨拶を交わし、私たちは管理会社に向かいながら話をする。 「『歌死魔さん』の話は俺も聞いたことがあるよ。カラオケ店で起こる心霊現象の内容を知った時、その幽霊の正体が優子だとは信じたくはなかったよ…。死んだ後も苦しみ続けて、しかも人を呪っているだなんて、こんな噂は大嘘だって思いたかった…」 駅のすぐそばにあった管理会社のビル前。 藤沢さんだけが中に入って行き、私たちは外でしばらく待機した。 やがて出て来た藤沢さんの手には、スマホが握られていた。 「受け取ったよ。間違いなく、機種変の前に優子が使用していたスマホだ。これを、優子のおばあさんに渡せばいいんだね?」 私たちは返答に困った。 そのスマホをどうすればいいのか、それを知っている人は… 「…違う」 神楽君が、低い声でぽつりと呟いた。 藤沢さんが、え?という顔で、潤君の隣に立つ神楽君を見る。 「彼女はそのスマホに、オリジナルの曲を録音していた。その曲は、貴方への贈り物の曲です」 「俺に?」 「誕生日プレゼントの曲だと、言っていました」 神楽君はそうきっぱりした口調で言った。 藤沢さんは驚いた表情のまま、手元のスマホに視線を落とす。 「誕生日プレゼント……。あぁ、そっか…」 納得したように呟いた藤沢さんの声は、微かに震えていた。
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