下『死者のメッセージ』

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「優子…」 彼の頬に、一筋の涙が流れる。 「…優子から、誕生日プレゼントは何がいいかって聞かれた時に、優子が作詞作曲した曲がいいなって言ったんだ」 藤沢さんはぽつりぽつりと語る。 「優子の歌手になる夢を、幼い頃からずっと応援していたよ。俺が社会人になって稼ぎが安定したら、彼女に告白をして、結婚したいとも思っていたんだ。彼女の夢を叶える為の力になりたかった…。彼女を、あの悲惨な日常から救い出してあげたかった…なのに……」 藤沢さんは物思いから顔を上げると、柔和な笑みを浮かべる。 「君たちのおかげで優子からのプレゼントを受け取ることができたよ。本当に、ありがとう…」 藤沢さんは、彼女からの誕生日プレゼントを大事そうに鞄にしまうと、私たちの前から去って行った。
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