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これでもう、呪いは解けたんだろうか…。
* * *
電車で帰る潤君と神楽君を、改札口の前でリーダーと見送る。
「…潤君、神楽君。今日は本当に、ありがとう」
お礼を言って軽く頭を下げた私に、潤君が困った顔に笑みを浮かべて指先で頬を掻く。
「いえ、俺は特に何も役に立ってないですよ」
「だったら俺だって何もしてねぇぞ。協力したのは幸尋の奴だ」
と、潤君の方を横目で見ながら気怠げな口調で神楽君は言った。
幸尋…初めて聞く名前。
「…もう1人の人格の彼、幸尋って名前なんだね」
「…、…」
私と目が合った神楽君は一瞬驚き、そして自らが口にしたそれに気づくと、しまった…と苦々しい表情で唇をぐっと引き結び、私から顔をそらしてしまった。
「帰ろうぜ、潤」
「ちょっ、引っ張るなよ拓美。…あ、リーダー、篠岡さん、さよなら、また明日!」
神楽君に腕を引かれながら改札口を通り、潤君は私たちに手を振った。
神楽君は一度も振り返らず、2人はホームの先へと消えて行った。
「…リーダー、どうしよう。神楽君、怒っちゃったかな…」
戸惑って、隣にいるリーダーを見る。
リーダーは困った顔で「気にすんな」と言って、私の頭をポンと軽く叩いた。
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