長谷川雅也、30歳。チューリップの妖精を拾いました。

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「まあ、小さな子が来た以上このままの生活は続けられないよな」 チューリップの花の姿にして深夜まであんなブラックな会社にいさせた事に罪悪感も感じていた。彼は純粋な子供だ。 「おにいしゃんがハッピーだと僕もハッピーなの! 嬉しいんだよ! だから、いっぱいいっぱい悪い奴らと戦って頑張るのはかっこいい、しゅごいけど……笑顔が無くなっちゃってるよ! ハッピー消えちゃう!」 「でも、今更新しい仕事なんて……」 「おにいしゃんなら大丈夫だよ! 僕がついてるもん! フレーフレーおにいしゃん毎日しゅるの! だから、お願いお願い!」 こんな小さな子に心配かけて、お願いされて、30にもなって俺は情けないな。 というかこんなに誰かに心配されるなんて今迄無かった。 「まあ、倒れたら君の世話出来ないもんな。チューリップに言われて今日、ようやく実感した。今迄いかにひどい環境にいたか。チューリップを廃棄しようとする心が真っ黒な上司に頭を下げてなんて愚かだろうって」 「おにいしゃんはもっと優しいしぇかいにいるべきだよ!」 「優しい世界……あるかな」 「大丈夫! おにいしゃんみたいに心がまっしろけっけな人いっぱいいるよ!」 彼の自分には前向きさに俺は救われる。 30歳になって初めて出来た友人はとてもとても小さいけれど、頼もしい。 「ーー仕事、辞めるよ。良い子のお願いだからな」 「わぁ、やったぁ! おにいしゃんありがとう!」 「いっぱい応援してくれるんだよな?」 「あい! チューリップがついてれば大丈夫!」 小さな小さなできたばかりの友人の言葉で俺はようやく目が覚めた。 彼が現れてからずっとどんよりとした曇り空のような色をしていた世界が色付いていく。 「これからはいっぱいもぐもぐしていっぱいおねんねしていっぱい僕とあしょんでねっ!」 「肝に銘じます」 「おにいしゃんの日本語難しいよ!」 「ごめんごめん」 これから始めるこの子との物語を考えるとワクワクする。 「他の子にも会わないとね!」 「他の妖精か。楽しみだな」 課長に辞めたいと話すのは憂鬱だけど、この子が側にいて見守ってくれていると思ったら気持ちが軽くなる。 俺は30歳になったのを機に人生をやり直す。 チューリップの妖精のおかげでようやく決断したのだった。 【END】
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