長谷川雅也、30歳。チューリップの妖精を拾いました。

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「おにいしゃんお顔が青くなくなったよ!」 「え? そうか?」 「いっぱいおねんねして元気になったんだね!」 確かに久しぶりにたくさん睡眠をとったからかすっきりした感覚は俺にもあった。 「ありがとうな、チューリップ」 「あいっ! おにいしゃんがハッピーだと僕も嬉しい!」 初めて会ったばかりだというのに何でこんなにこの子に癒されるんだろう。妖精パワーってやつか? 「夜ご飯考えないと……」 「おにいしゃんのご飯だね! いっぱいもぐもぐしようね!」 「とりあえず、スーパーに食材買いに行くか」 「スーパー?」 「食べ物をお買い物するところ」 「僕も行って良いの!?」 「ああ、置いてはいけないから」 「お出かけ、お出かけー!」 来たばかりとは思えないくらい環境に順応しているチューリップだな。 チューリップの妖精を引き連れ、俺はスーパーへと向かった。 「すごい髪色ねぇ」 「今の子って派手なのねぇ」 スーパーに向かって歩いていると、すれ違う人皆がチューリップの妖精を見て行く。 妖精だからといって他の人に見えないわけではないらしい。 やっぱり髪色は珍しがられるか。 「チューリップ、変かな。みーんなに見られるよ」 「まあ、こういう髪色の子供はあまりいないからな」 「まっかっかな髪の毛、変?」 「いや、それも個性だから」 「こしぇい?」 「えっと、みんな違ってみんな良い的な?」 「チューリップ変じゃないのね!」 変じゃないって言われたら嘘になるけど。 「俺にはできない髪色だからすごいな」 「おにいしゃん髪まっかっかできないの?」 「君みたいに似合うわけじゃないから」 「おしょろいしたかった!」 しかし、初めて会ったばかりとは思えないくらい俺に懐いてるな、この子。 「なぁ、俺がその……パートナーやらで嬉しいのか?」 「うんっ! 僕、おにいしゃんと出会えて嬉しい! おにいしゃん、いつもチューリップに話しかけてたでしょ? だからね、優しい人なんだなって僕知ってるんだよ! 美味しいおみじゅもくれた!」 こんなに誰かに懐かれるのなんて人生初めてな気がする。 猫も寄り付かないような人間だったから。 この子はパートナーが俺で良いって思ってくれてるんだな。
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