私の影と本当の私

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翌日、もう一人の自分は制服とバッグを無言で渡してきた。 「・・・私に、学校へ行かせてくれるの?」 「うん。 だって行きたいんでしょ?」 まだ怖い気持ちはあるが小さく頷いた。 「もう逃げ出さない?」 「・・・逃げ出さない。 利用されるよりも、自分の日常が崩れる方が怖い」 そう言うと彼女は笑った。 「じゃあ頑張りなよ。 アタシも付いていくからさ」 「付いていくって? 駄目だよ、そんなことをしたら!」 「不審がられる? 大丈夫。 だってアタシは、アンタの影だもん」 その言葉に首を傾げた。 「影? ドッペルゲンガーじゃないの?」 「違うよ。 ほら」 彼女はバッとカーテンを開けた。 今までは外の人から姿を見られないようにカーテンを閉めていたのだ。 朝日が一気に部屋に入ってきた。 足元を見ると確かに二人に影はない。 「あ、本当だ・・・」 「これでアンタとはもう喋れなくなるけどね」 彼女は近付いてきた。 「大丈夫。 アタシはずっとアンタに付いているから」 そう言ってもう一人の自分は似奈の身体の中へと入っていった。 すると自分に影が現れた。 「・・・影って、本当だったんだ・・・」 驚いていると一階から母の声が聞こえた。 「似奈ー! 早くしないと遅刻するよー!」 「あ、うん!」 そう言われすぐさま支度をし学校へと向かった。 赤井たちとは同じ時間に待ち合わせをしているわけではないが、また昇降口で出会ってしまった。  おそらくもう一人の自分がこの時間にと時間を合わせたのだろう。 ―――・・・よしッ! 勇気を出すと似奈が自ら赤井たちに向かって挨拶をした。 「お、おはよ!」 すると赤井たちは驚くようなこともなく笑顔でこう言った。 「おぉ、似奈じゃん。 おはよ。 昨日と違って今日は元気だな?」 「そ、そうかな?」 「元気そうで安心した。 教室へ行こう」 優しく迎え入れてくれた。 一緒に教室へ向かっていると壮也とすれ違った。 壮也から声をかけてくる。 「あ、白鳥! おはよ」 「そ、壮也くん! お、おはよ」 やはり好きな人と話すのは緊張する。 「昨日はプレゼントありがとう。 赤井たちと一段と仲よくなっていることにまずは驚いたけど。 また明るくなった?」 表情だけでも違うことに気付いたようだ。 「うん。 ・・・今の私は、どうかな?」 「いいと思うよ」 壮也のその言葉に赤井たちが乗っかってくる。 「えー、何々? 二人共、どういう関係?」 「いつの間にラブラブな関係になったのさぁー!」 「そ、そんなんじゃねぇしッ!」 壮也が戸惑いながら返事をしていると似奈は自分の影が少し動いた気がした。 足元に視線を向ける。 ―――・・・あ。 すると自分は動いていないのに影はピースサインを見せてきた。 それを見て似奈は思わず笑みをこぼす。 ―――ありがとう。 ―――もう一人の自分が、新しい日常を手に入れてくれたんだよね。 ―――この日常を壊さないように、後悔しないように過ごさなきゃ。 似奈は少しずつ夢見てた理想の姿に変わることができそうだった。                              -END-
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