シャッター街のアリス

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電車なんてとっくに終わってしまった。 時折、商店街を吹き抜ける風がシャッターを揺らし、ガタガタと乾いた音を立てる。 深夜にこんな所に座り込んでコンビニで買ったウイスキーのハーフボトルをチビチビ飲む事になるなど、考えてもみなかった。 昔は華やいでいたこの商店街も、今では半分以上の店がシャッターを下ろしている。 俺が若い頃は夜中も防犯のためにアーケードには照明が灯され、若い奴らが踊ったり、歌ったり、始発までの時間を潰すためにたむろしていたが、今では昼間でも暗いアーケード街になってしまっている。 アーケード街の端から端まで敷き詰められたインロクも所々が欠けて、煤けて汚れ、踏み潰されたガムがこびり付いていた。 そのインロクの上に転がした数本の吸い殻が風で転がって行く。 俺はそれを見て、吸い殻を拾う訳でもなく、またタバコに火をつけた。 その煙は舞う様な風に流されて直ぐに消えて行く。 俺はそれを見て苦笑するしかなかった。 俺の人生の様だと感じたからだった。
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