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「書けない作家なんて紙屑以下なんですよ」
俺は持ち込んだ作品を若い編集者にそう罵られ、真っ直ぐに帰る気にもなれず、気が付くと、この町に来ていた。
若い頃に住んでいた町で特に良い思い出がある町でもなく、ただノスタルジックな感傷に浸ってみたくなっただけだった。
駅前の居酒屋で安い酒を飲み、気が付くと日も暮れて、追い出される様に店を出た。
駅前にある唯一の光が新しく出来たコンビニで、若者たちが蛾の様にその光に集まっていて、それを掻き分ける様にコンビニに入ると酒を買って、このアーケードの下に座っていた。
以前、あった筈の駅前の古いビジネスホテルも取り壊され、今はコインパーキングになっていて、俺はこのアーケードの下で始発を待つ事にした。
昔、一度、酔い潰れて同じ場所に座り込んでいた事があった。
その時だった。俺がアリスに会ったのは…。
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