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目を開くと俺を覗き込む少女の姿があった。
俺は徐々に開けて行く視界の中の制服姿の少女を見て、夢を見ているのかと思った。
「こんな所で寝てると風邪ひくよ」
少女は酔いのせいで頭痛の残る俺に言った。
「ああ、分かってるよ。大人だし」
そんな返事をして、俺は手に持った酒を口にした。
そして俯くと顔を顰める。
少女はそんな俺に微笑むとスカートを抱え込む様にして俺の前にしゃがんだ。
逆光の中に浮かび上がる彼女を、俺は眩しそうに目を細めて見た。
「お酒って美味しいの」
少女は俺の手からウイスキーのボトルを引っ手繰る様に取るとマジマジと見ている。
俺は慌てて少女からボトルを取り上げる。
「酒ってのはな、その日の気分で味が変わる不思議な飲み物なんだよ。楽しい酒は美味いし、沈んだ気分の時は味が無い。怒られながら飲む酒なんて飲まない方が良いくらいに不味い。同じ酒でもまったく違うモンになるんだ」
俺はまたウイスキーを一口飲んだ。
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