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その後、揲が広間を出ると例の細い武官——崋翔篤驥という武官が不機嫌そうに後をついてきた。
「宗主に城を案内してやれと言われた。住む場所が欲しければついてこい」
振り返ることなく彼はどんどん先を行く。
この男に対し、揲が最初に持った印象は「本当に夕雩の武官なのか」というものだ。
上背はあるが、手足は細く女子のような整った顔立ちをしていて太刀を振り回す姿など到底想像できない。
しかし、その切れ長の目が放つ眼光はそんな考えを吹き飛ばすほどに鋭いものだった。
それに今、歩き方を見て確信した。この人は相当強い、夕雩家の宗主が自慢するように言っていただけはある。
***
やがて揲たちは一旦外へでた。
ちなみに先ほどまでいた建物は宗主が住まう本殿というものらしい。
その本殿を囲うように来たに菊宮、東に薊宮、西に藤宮と呼ばれる建物があるそうだ。
「菊宮家、薊宮家、藤宮家は宗主のご兄弟の家……いわゆる分家だ」
そして、と篤驥は菊宮のさらに北にある金色の門の前で足をとめた。血なまぐさいこちらと隔てるように作られた塀には蝶や鳥の装飾がほどこされており美しい。
「紲御殿……お前はここに住まうこととなる」
「……城の一番奥に閉じ込めるってわけね」
そう言うと篤驥は大げさにため息をついた。きっと内心では性格がひねくれているとか毒を吐いていることだろう。
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