第二話 真龍

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 「でしたら若宗主!私に先陣をお任せください!」  揲は鐐の気を引きたくてそう言って勢いよく手を挙げた。 「馬鹿者!女子(おなご)のお前にそんな名誉のある大役などつとまるはずがない!  先陣だぞ、お前のことだから一番のりに死ぬだけだ」  年上の体格の良い男に怒鳴られる。  睨み返してやると男は眉を逆立てて揲の方へ寄ってきた。 「まったく……調子に乗りやがって……お前もだ満風!御潴(みづま)では身の程をわきまえるということを教えていないのか?」  ギョロリと男の目玉が音を立てて動いたような気がした。  相手は挑発しているだけだ。その巨躯(きょく)には単純な力比べで勝てるわけがない。  それに恐ろしかった。揲を見下ろす相手がいつもの数倍は大きく見える。金縛りにあったように体が動かないでいた。 「もういい、あまり年下をいじめるな」  見かねた鐐が呆れたように言った。きっとどちらにも呆れていたのだ。  乱暴な男に、臆病な揲に。  たして二でわると調度良いのに、と頭の中で勝手に計算式をたてる。  そんな自分がひどくみじめだった。
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