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6. SIDE 涼
途方に暮れていた俺のところに現れたのは自分より5歳程年上に見える男で、櫻坂那月と名乗った。
ガタイがよく、短髪で前髪を上げている彼は目つきが悪いことも相まってヤのつく仕事の方ではないかと震えてしまったのはご愛嬌だ。
見た目怖い割には可愛い名前だな、と思ったのが顔に出てしまってかなり焦ったが、怒ることはなく、よくそんな反応されると笑ってくれた。
体格が良くて目つきが鋭いだけで、いざ話してみると全然怖い人じゃないようでホッとする。
しかも、苗字は長いから名前呼びでいいと言われた。
彼は俺の捻ったらしい足を見てくれるようで、靴を脱がせてくれたが、腫れ上がっているらしい足首に革靴が引っかかってしまって激痛が走った。
優しく扱ってくれているのは分かっているものの、動かされる度に痛む足に、心が折れそうになる。
あまりの痛みに弱音を吐き続けてしまっていたのに後から気づき、羞恥に襲われた。
痛みに耐えながらも、自分で動かすように言われて動かしてみたりしていたら、
「内側に捻ったっつーことでいいんだよな?悪いがちょいと触る。」
と聞かれた。
俺が頷いたのを見ると、那月さんは軽く足首を曲げ伸ばししたり、関節のあたりを押すようにしたりして何かを確認している。
そんなに強くはやられていないのに、それは今までの比にならないくらいの痛みで無意識に目に涙が浮かんでいた。
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