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 翌日、女は忌み子の前から姿を消した。忌み子は行方を聞いてまわったが、どこへ行ったのか誰も知らなかった。  三日後の夜、女は街に戻り、忌み子の前に現れた。暗い部屋の中でもわかるほど、服のあちこちが泥か何かで黒く汚れている。その手には丸い袋が提げられていた。  戻ったぞと女が告げ、どこに行っていたのかと忌み子が問うた。  女は、お前の村に行っていたと答えて、袋の中身を足元に放り出した。  忌み子の喉が、ごくりと鳴った。  見覚えがあるだろうと、女が問うた。忌み子は何も答えずそれを見ていた。  呪い師の首だと、女が言った。忌み子は何も言わずそれを見ていた。  お前の村は潰したと、女が告げた。忌み子は顔を上げ女を見た。  どういうことだと、忌み子が問うた。皆殺しにしたと、女は答えた。  家族はどうしたと、忌み子が問うた。皆殺しにしたと、女は答えた。  なぜそんなことをと、忌み子が問うた。お前が逃げられないようにしたと、女は答えた。  忌み子の体が震えた。女の目が、覆面の隙間から忌み子を見下ろしている。  兄はどうしたと忌み子が聞いた。兄も殺したのかと忌み子が問うた。兄はまだ十二歳だと忌み子が告げた。  女はただひとこと、殺したと言った。  忌み子が女に襲い掛かった。呪い師の首を蹴り飛ばし、正面から女に飛び掛かった。  女は素早かった。身を開いて忌み子を(かわ)し、すれ違いざまに足をかけ、転んだところへ背後からのしかかった。  忌み子はもがき、身を(よじ)り、暴れた。しかし背の女はびくともせず、ただ地面をはい回っただけだった。  忌み子の口から呪詛(じゅそ)が放たれる。殺してやる、死んでしまえ、なぜ殺した、家族を返せ、あらゆる言葉で女を呪う。  女は、(わめ)き叫ぶ忌み子の耳元へ口を寄せ、  ――これでお前は私の物だ。お前に帰る場所はない。  呪いの言葉を投げ返し、忌み子の首を一閃(いっせん)した。
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