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はじまりの地
ロタ・ファトムは朝食を終えて、歯をみがきました。
ていねいにひげを剃り、髪にブラシをとおします。
シャツの上にかわの服を着て、かわのブーツをはきました。
おしゃれな羽根つき帽子をかぶり、腰に木の棒をつるしました。
ロタは出かけるしたくを整えると、ドアを開けました。
家の前を通りかかった、商人風の男と目が合います。
中年の男は、「ありがとう」と声をかけてきました。
ロタは、男が礼を言った相手はどこにいるんだろう? と左右を見回しました。
「ロタ、君に言ってるんだ。ありがとう」
「はあ、どうも」
身に覚えのないことでしたが、せっかくなのでそう答えました。
男はほかにロタへの用事はないらしく、手を振りながら去って行きました。
「まただ。なぜ知らない人から『ありがとう』と言われるのか、理由がわからん」
ロタは首をひねりました。
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