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ロタは町の周囲をぐるりと囲む、城壁に沿って歩きました。
すると門番の兵士が、「ありがとう」と言ってきました。
あいさつをして通り過ぎようとすると、兵士が彼を呼び止めました。
「王様が、『最近ロタに、ありがとうを言っていない』と、おっしゃっていた」
だから城へ行ってくれないか、というのです。
彼にはとくに、する用事もありません。
ここはひとつ、兵士の頼みを聞くことにしました。
城へ向かって大通りを歩いていくと、知った顔に会いました。
旧友のサピです。
「おはよう、ロタ。今日はめずらしいね」
彼が首をひねると、サピは笑い出しました。
「何がって、君が大通りを歩くのが、だよ。いつもは避けているだろう?」
たしかに人通りが多いと「ありがとう」も多いので、めったに通りません。
「城門の兵士に頼まれたんだ。王様に会いに行く」
「それはいい。さぞ、お喜びになるだろう」
サピは、「帰りにうちへ寄るといい」と言って、去って行きました。
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