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「それにしても最近姿を見かけなかったけど、ご飯はしっかり食べてるの?身体の調子は大丈夫?」
「最近は忙しかったのであまり休日でも外に出られなかっただけで、体は40代になっても健康体です」
「そうなの?それは良かったわ。おばちゃんぐらいの年齢になると朝起きると体のあっちこっちが痛くてね~」
ガタンゴトンガタンゴトン
大石さんと世間話をしていると、聞き慣れた線路が擦れる音が遠くから聞こえてきた。音が聞こえると同時に周囲の人々は会話を止め、遠くから来る電車に視線を向けた。
曇り空の下、どこまでも続いているような地平線の先から古ぼけた電車が音を立ててこちらに向かってきた。その姿は子供の頃からずっと走り続けてきた思い出の中の電車そのものだった。
「それじゃあ皆さん、横断幕を広げますので、参加できる方はご協力をお願いします」
列車の先頭が来るホームの左端にいる初老の男性が、腰の高さほどある筒状に巻かれた白い紙を持って周りの人々に呼びかけていた。
そして、電車が到着すると筒状に巻かれていた紙は1つの文章を表していた。
“70年間ありがとう。お疲れ様でした”
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