【書籍化作品】記憶

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 ――あの時見えたのは、本当に前世の記憶だったのかな。  あれからずっと気になっている。  宿を出発してから数時間。  時間がたった事もあって、少し頭の中で整理されてはいるけど、やっぱり意味わかんない。  まっすぐの線で全てが切り取られた世界。  四角がいっぱいある世界。  驚くほど明るかったような気もする。  そして、何か私に警告しているような不安感。  でもその中には、何故か甘酸っぱいような、きゅんきゅんするような気持ちも混じってる。  ……やっぱり意味わかんない。  ちょっと頭を振った。 「もういい加減、宿に帰りなさい。ここから先は私だけが行くから」  私の右手を掴んでいる妹に声をかける。 「やーだっ! おねえちゃんと一緒に行くのー!」  妹は掴んでいる私の右手をぶんぶんと振るようにして抗議した。  あぁ、可愛いっ! 可愛いけどっ! 「おねえちゃんはこれからお仕事なんだから、ちゃんと宿でお留守番してて?  ……一緒に行くのはだめなの。危ないのよ」 「危ないなら、余計ついていかなきゃだめじゃんっ!  あたしがおねえちゃんを守るんだもん!」  妹は余計力を込めて私の右手を握った。 「守ってくれるのは嬉しいけど、本当に危険な所なのよ。  大昔の遺跡って、いろいろと仕掛けがあったり……」 「わぁ、面白そう!」  そう。私は駆け出しの考古学者……じゃなくて、考古学研究室の学生。  今向かっているのは、立ち入りを禁止されている危険地域だ。  そこにある、数万年前のものとも言われている遺跡。  それが、私の最終目的地だった。
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